7月13日 コウノトリが運んでくれた物
久保敬親さん
久保敬親さんとの出会いは麻機に初めて野生のコウノトリが現れた1995年でした。
私の撮ったコウノトリの写真を見て『この写真を撮った人に会いたい』と言っている人がいると言うので行ってみると、クマの様な風貌の男性が待っていました。
挨拶をして、あの動物写真家の久保敬親さん本人であることが分かりました。
話してみると、怖そうな外見とは裏腹にとても穏やかな話し方で、まじめな性格を感じました。
コウノトリも一緒に撮影をし、その後も静岡に来ると声を掛けてくれました。
一度は家に泊ってもらい、飲んで鳥の事、撮影の苦労話などを聞かせて頂きました。
久保さんは静岡の春が大好きだと言っていました。
撮影で日本全国を訪れているが、『春は静岡が一番いい』と言ってくれました。
静岡の春は田んぼ一面にレンゲの花が咲き、キジがこんなに撮り易い所は無いと言っていました。
2000年に事務所を東京から北海道に移し、静岡に来る事も少なくなり、年賀状だけのお付き合いになっていました。
最近年賀状が届かないのでどうしたのかと、思ってはいました。
写真展の帰りに本屋により、そこで久保さんの本を見付け、中もろくに見ないで買いました。
急いで家に帰り本をめくると、そこに久保さんが亡くなった事が書いてあり、愕然としました。
まさか2年前に亡くなっていたとは知りませんでした。
この本が久保さんの集大成なのか。
久保さんは私に『自分の写真を安売りしてはいけない。写真集を出すなら大きなハードカバーの本で出さないとダメだ』と、『最初だからと、小さなペラペラの安い本を出すと、後はもう大きなハードカバーが出せなくなる』とも言っていました。
久保さんが生きていたら今回の本をどう見るでしょうか。
大きさは立派。監修も解説も当代一流の方々。編集もレイアウトも見事。写真ももちろんスゴイ写真ばかり。
でもソフトカバーでした。
今は豪華なハードカバーの写真集では売れない事は分かります。
一人でも多くの人に見てもらいたいからこの形になったのでしょう。
久保さんも天国で豪快に笑っているでしょう。
久保さんの写真には良い意味で泥臭い野趣があります。オシャレなサロン調の華やかさはありません。
それが、他の野鳥カメラマンには無い、久保さんの野生写真の味だと思います。
ぜひ多くの方にこの本を見て頂きたいと思います。
久保敬親さんのご冥福を祈ります。 合掌
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